戸隠の豊かな農村風景と食文化を次世代に
戸隠地域づくり協議会様の農産物加工品ブランド「戸隠の台所」のブランディングと事業化支援を担当させていただきました。
Outline
長野市北部の戸隠地区といえば、戸隠そばや戸隠神社で有名で観光客に人気のエリア。
一方、観光地エリアから車を15分ほど走らせると、山間の台地に農地と少数の民家が点在する農村地域が広がっています。
そんな農村地域のひとつ「戸隠豊岡地区」は、2023年に農林水産省が認定する農村型地域運営組織(農村RMO)モデル形成支援事業の対象地域となり、「戸隠地域づくり協議会」を中心に農地保全と高齢者の生活支援に向けた取り組みを行っているエリアです。
2024年4月、その取り組みの一環として遊休農地を活用した大豆の栽培とその加工品開発のプロジェクトが立ち上がり、担当者から「商品のロゴやパッケージデザインをお願いしたい」とご相談を受けたことがことの始まりでした。
Planning
初回のヒアリングに伺った際には、昨年の活動により地域が抱える課題とその解決方法のアイディアは出たものの、これからどうやって進めていくかが、明確に決まっていないような状況でした。協議会として遊休農地の活用を進めるにも、その担い手が足りないということが本質的な課題のように思えました。
そこで、ロゴデザインやパッケージ開発の前段として、プロジェクトが目指す将来像を共有し、ゴールから逆算した取り組みができるよう、役割分担やワークフローを含めた企画書を作成し、仮称「戸隠農家の底力」プロジェクトとして提案しました。
提案書には、農産物加工品開発の具体的なスケジュールや制作コストの目安なども提示してあったため、協議会内の意思決定の促進剤となり、プロジェクトの本格稼働に結びつきました。
Branding
農産物加工品開発のネーミングとコンセプトの策定に当たっては、豊岡地区の農家を訪問し、80歳を超えてなお現役のお婆さんと、地域の農業の今昔や、味噌づくり、漬物づくりのことなど、さまざまなお話を聴かせていただきました。それらのお話を通して「戸隠の台所」というネーミングが生まれ、地域の人たちが大事に伝承してきた獅子舞を五穀豊穣のシンボルとしてロゴマークに取り込んでいくことが決まりました。
Copy Writing
ロゴマークと連動してブランドの世界観を伝えるキャッチコピーは「稔りの里に獅子が舞う」。そのストーリーを伝えるボディコピーは、ヒアリングから浮かび上がった農家さんの日常や、農業への想いを詩で表現しました。
「おめとこ爺さんまめってえかい?」
「たまにはお茶飲みこされ」
畑帰りの婆さんたちが鍬を片手に立ち話
ここは戸隠豊岡地区
飯縄山の溶岩がつくった肥沃な土壌と霧下の寒暖差が
滋味深い野菜や穀物を育む 稔りの里先人たちは田畑を耕し、草をとり、
虫に食われれば憤り、遅霜が立てば嘆き、
豊作を喜び、漬物をつけて隣人をもてなし、
四季折々の暮らしを営んできた
婆さんたちが若い頃には当たり前だった農家の営みは
今や昔の物語になりつつある
種まきの春には 祈りを込めて
刈入れの秋には 感謝に満ちて
氏神さまに捧げ舞う 獅子神楽
先祖代々守り継いできた農村の風景が
婆さんの孫の、そのまた孫の代まであり続けるように戸隠の食を支える「台所」から
愛と希望を込めて
Press Release
ロゴデザイン確定から程なくして、第一弾の加工食品として100%戸隠産大豆使用の豆菓子の販売が決まりました。その発売に併せ、「戸隠の台所」のプレスリリースを作成。原稿とプレスリリース配信をサポートしました。リリースから1週間後には地元の新聞社とテレビ局の取材が入り、地区内外に「戸隠の台所」の認知を広めることができました。
こうして動き始めた「戸隠の台所」プロジェクト。2025年度には初の100%戸隠産大豆を使った味噌の販売が予定されています。今後、農産物加工品開発とその販売を事業として地域に根付かせていくためには、担い手の獲得を含め、継続的な取り組みが必要となります。当社としてもクリエイティブ支援を通して、戸隠地域づくり協議会様の課題解決に貢献できればと願っています。